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1.雷雨の後 まだこの木の散り時ではないらしく、 強い雷雨にも負けず花を開き続けている。 2003.6.19--北海道北海道幌加内町三頭山(46K) |
登山は嫌いである(これまでに何度も書いてきた)。
だが、そこに桜があるならば、やはり登らなくてはなるまい。
友人2人から、三頭山に桜があるという情報が入った。
三頭山は、マイナス41.2度という日本最寒を記録した幌加内町にある、標高1009mの山だ。登山口との標高差は約800m。私がこれまでに登ってきた山の中でもっとも標高差が大きいが、がんばるしかない。
折も折、台風が九州西方を北上している。遠く離れたここ北海道の空も、なんとなく落ち着かない感じだ。
朝6時頃に一旦起きて山を見たら、霧にかすんでいて危なそうな感じだ。今日は無理だろうか。台風は明日以降温帯低気圧に変わって北海道に近づくという予報だから、今日登れないと数日後になる。
霧がずっと続くかと思われたが、10時頃に山がすっきりと晴れた。やはり登ろう。
少し早い昼食をとり、準備の後、11時半に政和登山口に入る。山登りとしては遅い出発だ。
固い決心をくじくかのような急な斜面がいきなり始まり、一旦なだらかになった後、再び急斜面。コースタイム通り1時間半ほどで5合目丸山分岐に到着。
丸山分岐には立派なオフロード車が1台止まっている。こういう車なら雨遠別登山口から歩かなくてもここまで来ることができるが、私の車では無理だと判断し、自分の足で登ってきた。雨遠別山道を覗いてみたが、やはり私の車では走れそうにないほど道路に凹凸がある。
丸山分岐で休むことなく歩を進める。途中ですれ違った登山者に伺ったところ、7合目付近と、8合目より上で桜が咲いていたという。
午後2時ごろ7合目着。前後に2本の桜があり、うち1本は直径10cm以上の枝が6,7本にも分岐した立派なものだ。だが、花はほとんど散っていて絵にならない。もう少し登ってみよう。
と、8合目直前で雷鳴がした。ラジオの天気予報では雷雨注意報は一切出ていないにもかかわらず、である。そしてすぐに雨が降り出した。かなり強いため、ウインドブレーカーを荷物にかぶせてカメラを守る。自分はびしょぬれになるが仕方がない。また、できる限りの金属物を外し(ズボンのチャックと靴の金具だけはどうしようもなかった)、一箇所にまとめる。2,3分に1度、雷鳴が近くで聞こえる。かなり心細い。
大きな木の下でしゃがみこんで雷雨をやり過ごすこと30分。この旅で一番情けない時間だった。ようやく雨も上がり、雷鳴も遠のいた。ここまで来て写真を撮れないのは残念なので、もう少し登って桜を探そう。
私が雨宿りをしていたのは8合目の直下だった。わずかに残る雪渓を横断し、2分で8合目展望台到着。そしてその下に見事に満開になっている桜があった。急いでカメラを準備して撮影。雲間からわずかに日光が差したが、すぐになくなってしまった。
さあ、急いで下山だ。だが、登りではなんともなかった道がぬかるんで、滑ること滑ること。慎重に足場を探りながら坂を下りる。本来なら下りは上りよりも楽しいはずだが、今回だけは別だ。
そのうち再び雷鳴が近くで聞こえてきた。手近な大木の下で雨宿り。雷に打たれて消息不明になるのはまずいと考え、携帯電話が使えるのを幸いに、先日まで一緒だった横浜の友人にメールを打つ。「明日の朝までに私から下山の連絡ができなかったら、幌加内町の警察に連絡して欲しい」と。
だが、天気の神様は私を見放さなかった。
15分ほどの雷待ちを2回と、転倒5回、無数の転倒未遂を経て、日没直前の6時半に無事下山。急いで友人に下山連絡のメールを打ったのは言うまでもない。
なりたてとは言え私も一応気象予報士である。今朝の天気図をインターネットで調べようとしたが、泊まっていた道の駅ではPHSが使えず、電話ケーブルがつなげるグレー色の公衆電話もなく、結局山の様子を観察しただけで出発せざるを得なかった。
だけど、どんなに言い訳をしたって、仮に雷が落ちて生還できたとしても「雷に打たれたことのある気象予報士」では社会の信用は得られまい(苦笑)。
今回はおそらく、台風の遠い影響を受けて、雷雲が突然湧いたのではないかと思う。ラジオの雷雨注意報も間に合わなかったのだろう。
山で雷に遭う怖さを知った。これからは気象に関しては慎重に判断しようと思う。
これからもまだまだきびしい登山との戦いが続くはずだ。
器はそばの実を模したのか三角形だ。 右はミニ天丼 (↑47KB) |