桜の葉や花を食べることができるのは、ご存知の通りです。
桜の葉は、さくら餅などの和菓子や料理などに使われます。食用となるのはオオシマザクラの若葉です。食用の葉の約80%は伊豆地方で生産されています。
写真の左側が、葉を取るために栽培しているオオシマザクラの畑です。ここではかなり低く刈り込んでいますね。人間の身長ぐらいになってしまうと収穫がし辛くなるので、こうして刈り込むのだそうです。 右側は収穫をやめた畑です。刈り込みをやめたので木が育ってしまったものです。 2003/4/4 静岡県松崎町で撮影 |
桜の花の塩漬けは、桜湯や和菓子、桜ごはん、お吸い物などに使われます。私はお酒が飲めないので縁がありませんが、日本酒や焼酎に浮かべることもあるそうです。ちょっと風流ですね。
見た目が重視されるため、食用の花としては色の濃い八重桜が好んで使われます。特に、カンザン(関山)という花がよく使われています。
桜の花の塩漬けを、水でひと洗いした後お湯に浮かべると桜湯(花漬、花湯とも言う)になります。
現代では結婚式などおめでたい席で出されることが多い桜湯ですが、江戸時代初期までは、桜湯は縁起の悪いものとしてそうした席では嫌われていました。桜の種類によっては花の散り際に急速に色があせてしまいます。そのことを「桜ざめ」と言います。桜ざめが、気持ちがさめることに繋がると考えられ、おめでたい席で桜湯が出されることはなかったのでした。また、桜の季節に婚礼を避ける風習まであったそうです。(逆に現代では、お茶が「茶を濁す」につながることから、結婚式では出さないようにすることもありますね。)
時代によって、考え方が変わってくるものなのですね。
一方、桜の花粉を飲むと健康によいと信じられていたことがあったそうで、花見には上から落ちてくる花粉を杯で飲むという意味もあったと言いますが、さて本当に効いたのでしょうか。
18世紀前半に、江戸向島長明寺の門番山本新六が、掃除に困った大量の桜の葉の使い道として、塩に漬け込んだ桜の葉で包んだ餅を売り出したところ、折りからの花見ブームに乗って名物となりました。これが長明寺桜餅です。関東の桜餅は、小麦粉などで作った皮であんを包みます。
一方、関西では粗くひいた道明寺粉(もち米の糒(ほしい。干飯)を臼でひいたもの)で作った餅であんをくるみます。
同じ桜餅でも、関東と関西で違うようですね。
ちなみに、スーパーやコンビニなどで関東風・関西風の桜餅の詰め合わせを見かけたことがあります(大手パンメーカーのヤマザキ製でした)。
「黄桜〜♪」というCMソングでよく知られている清酒黄桜。この黄桜とは、黄緑色の花をつけるウコン(鬱金)という桜のことです。黄桜酒造の初代社長がこの桜を好み、お酒のブランド名に採用したのだそうです。また、黄桜酒造の京都本社と丹波工場には、実際に黄桜が植えられています。
でも、お酒の原材料には桜は含まれていないと思います。
桜の材木は良質と言われ、目がつんでいるため昔は浮世絵などの版木として使われました。樹皮は古代から弓や刀の柄に巻きつけたそうです。また、現代でも箱などの細工物に使われます。
ただ、現在ホームセンターなどで桜材として売られているものの中にはシラカバなどが含まれていることがあるそうですので、桜材にこだわって工芸をしたい方はよく確かめたほうがいいようです。
桜材を電動工具で加工すると、桜餅と同じような香りが作業場いっぱいに広がります。確かに桜材なのだと感じる瞬間です。
最近では花屋の店頭で切り枝の桜を見かけることが多くなりました。
私の知っている限りでは、
・啓翁桜(12月〜翌春)
・河津桜(1月〜3月前半)
・ヒガンザクラ(3月頃)
があります。
また、鉢植えでは、旭山(大きくなりにくいので鉢植え向き)、南殿(なでん)、十月桜を見かけたことがあります。
啓翁桜で1本600円弱から800円、見頃のもので千円ぐらい(東京では高いです)、ヒガンザクラが600円ぐらいでした。
桜を贈るときには、小型の衣装箱と見間違えるほど大きなダンボールに入れられるそうです。受け取られた方は最初びっくりされるとか。でも、まだ桜を贈ることがめずらしいせいか、大変喜ばれるようですね。
桜は花に比べて茎が太いので、水揚げ(水切り)は難しいです。その代わり、花瓶などに挿す前に、
・えんぴつを削っている途中のように、枝の根元の皮を削る
・1,2cmぐらい縦の割れ目を入れる、できれば縦横に入れて十字の割れ目にする
ことで、水を吸いやすくするとよいそうです。
切り枝の桜を庭などの土に挿しておくと、マアマアの確率で根付くことがあります。
うまく育てると翌年もプチ花見ができるかも知れません。