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1. 2本の荘川桜。 手前が元・光輪寺の、向こう側が元・照蓮寺の桜。 2004.4.24--岐阜県荘川村 荘川桜(62K) |
2. まもなく真の闇が包む。 2004.4.24--岐阜県荘川村 荘川桜(49K) |
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3. ライトアップされた2本の桜。 手前が元 照蓮寺の桜。 2004.4.24--岐阜県荘川村 荘川桜(52K) |
岐阜県の荘川桜を見に行く。往復高速バス+レンタカーという、これまで未経験のパターンだ。
昨年は雪が多く、山の食べ物がなくなった鳥が桜まで降りてきて、荘川桜の花芽を食べてしまったそうだ。そのため、例年の3割程度しか花がなかったという。今年は写真で見る限り花付はいいようだ。期待に胸が膨らむ。
東京発高山行きの高速バスは所要5時間半。中央道−長野道を経て、松本インターからは国道158号を通って高山を目指す。途中の休憩地点である諏訪湖サービスエリア付近から、上高地手前の奈川渡ダム付近までの山には、ぽつぽつと満開の桜が見えて、車窓を楽しませる。
高山からさらにレンタカーで1時間半ほど走って、御母衣(みぼろ)湖に至る。巨大なダムによって作られた湖だ。私がまだ小さい頃、おばに連れられて真冬に来たことがあるのだが、子供用スキーで遊んだり、電気毛布が珍しかったりした記憶はあるものの、風景についてはまったく覚えていない。その頃も桜はここにあったはずなのだが、当時は全く興味を持っていなかった。
湖畔を走ること数分、突然右手に巨大な白い塊が見えてくる。
桜だ。
よく知られている通り、寺にあった2本の桜が湖底に沈むのを惜しんだ高碕達之助(電源開発初代総裁)が、"桜男"笹部新太郎や造園家丹羽政光、間組などの力を借りて湖畔に移植した。これが荘川桜だ。数年前のNHKの番組「プロジェクトX」でこの移植の詳細を見たとき、放送開始5分後から涙が止まらなかったほど感動した(苦笑)。樹齢は約400年と言われる。こんな高齢の桜が、よくぞ移植という厳しい変化を乗り越えられたものである。しかも、2本とも立派で、幹も十分太くたくましい。力強い生命力を感じる。湖底に沈んだ240戸の住民が、昔をしのぶよすがとして心を寄せる気持ちが痛いほど分かる。
花は満開。私が見たところつぼみは全く残っておらず、すべて花開いている。樹種はアズマヒガン(エドヒガン)。花は染井吉野に比べたら小さめ。手の届かない高さにある花をよーく観察すると、顎がひょうたんのような形をしている。エドヒガンの特徴だ。だが、風が強くて枝が揺れてしまい、アップの写真は撮れない。かと言って、人が多いため全体写真の構図もなかなか選びにくい。
午後の撮影を終え、別の場所の桜を下見した後、午後6時前に再び荘川桜の元に戻る。コーヒー屋のおねえさんによれば今日からライトアップが始まるらしい。東京を出るときは気温が15度ほどあり、ダウンジャケットは持ってこれなかった。でも、ここの気温はすでに4度まで下がり、軽装のまま外で待つのはむずかしい。暖房をガンガンに効かせた車内でしばらく身体を暖めた後、闇が迫る前に撮影ポイントに移動する。だが、そろそろ真っ暗になろうというのに一向にライトアップが始まらない。もしやライトアップ情報が間違っていたか、と付近のカメラマンと一緒になって心配しているうちに、7時を回った頃やっと担当者が到着。しばらく分電盤の操作をあれこれした後、7時10分過ぎにライトが点灯された。
「おおっ」、誰彼となく声を出してしまう。闇に浮かぶ2本の古木は凛として美しい。私は、0度に近い気温を忘れて1時間以上も撮影に没頭してしまう。
そのうち、南から拍手に送られて何かがやってくる。全区間250Kmに及ぶ長距離マラソン「2004さくら道国際ネイチャーラン」の選手だ。名古屋城を出発したのが午前6時、
これからゴールの金沢兼六園までまだ100Km以上もある。
荘川桜の移植に感銘して、「太平洋と日本海を桜のトンネルで結ぼう」と道路沿いに桜の苗木を植え続けた旧国鉄バス車掌、故佐藤良二さんの志を継ぐイベントだ。荘川桜はいわばこのイベントの源と言えよう。ライトアップされた桜はきっと選手の目に焼きついたことだろう。
午後8時過ぎ、とうとう雪が降ってきた。時折強い風のせいで斜めに吹き付ける。気温は1度まで下がった。軽装だし宿の食事の時間もあるので、早々に引き上げる。
明日朝まで雪が降るらしい。
桜は明日、どんな姿を見せてくれるだろうか。
下はおかずいっぱいの夕食。 (↑45KB) |