仕事の合間を見て休暇を取り沖縄にやってきた。実は2月末に今の会社を退職する予定なのだが、それまではできるだけ会社に迷惑をかけたくない。
3日間という限られた時間の中で、できるだけいい写真を撮りたいと思っている。
1日目は1月22日。桜の名所八重岳に着いたのは正午少し前。先週町役場に電話で伺ったところによれば20日頃が見頃ではないかということだったし、満開の木の下で成人式を行なったとも聞いていたから、今日では遅すぎるのではないかとも心配していた。しかし、山の頂上に向かう道沿いの桜並木の開花はまちまちだった。満開の木もあれば、全く咲いていない木もある。
ここに咲くのは、カンヒザクラという種類の桜だ。原産地は台湾と言われるが、最近は沖縄自生説も出ているらしい。日本本土で見る桜と少し違い、濃い紅色の小さ目の花が、ややうつむき加減に咲く。
この日はどんよりとした曇り空で、時々思い出したようにしか陽が差さない。沖縄らしい抜けるような青空に期待していたのだが、その思いは叶わない。
私よりもとても大きなレンズを持ったカメラマン2人が私に話しかけてきた。その方たちによれば、今年は暖冬なので桜の開花が遅いという。暖冬だから開花が遅い、というのは初めて聞いた私には理解しにくい話だったが、彼らはその理由を説明してくれた。
それによれば、桜はある程度の寒さを経験しないと花芽が開花の準備を始めないのだそうだ。だから、暖冬だと開花が遅くなるのだ。また、標高の高い八重岳などの寒い場所から咲き始めるのだという。
ところで、桜を撮るにしてはずいぶん大きい望遠レンズを使っていると思ったら、彼らは花ではなく、桜の木にやってくる沖縄固有の鳩、リュウキュウズアカアオバトの写真を撮っていた。彼らに促されて木を見ると、枝が揺れているあたりに確かに鳩がいる。体長12,3センチはあるだろうか。鳩が驚いて逃げるといけないのであまり近づくことができない。私も桜と鳩の写真に挑戦したが、その時私が持っていた200mm望遠レンズでは鳩は小さくしか写らなかった。
2日目。昨夜はとうとう嵐のような雨になったが、今朝も雨が止んでいない。
限られた時間しかないので、重い気分を引きずりながらレンタカーを走らせる。
まだ見頃ではないと聞いていたが、どのようなところか興味もあったので、名護市の名護城(なんぐすく)を訪ねた。
名護城の桜は八重岳よりもまだ開花が遅い。標高が低いからだろう。沖縄独特の赤瓦の建物の近くにいい桜の木を見つけたが、花は少ししか開いていない。
名護城は小高い山にあるのだが、山の斜面一面に桜が植えられているのが目に付いた。これらのたくさんの桜が一斉に咲きそろったら、さぞ壮観だろう。
名護の城跡に続いて、今帰仁(なきじん)の城跡に足を運んだ。ここも桜の名所だと聞いている。
今帰仁城址は城門や城壁の石組みが実に見事で、そのスケールも大きい。その石壁で囲まれた雰囲気のいい庭の中に、たくさんの桜が植えられている。しかし、ここの桜もほとんど咲いていない。観光バスが入れ替わりやってきて、バスガイドが桜の名所であることを説明するが、乗客たちはちょっとがっかりした様子でそれを聞いていた。
3日目。今日が撮影のできる最後の日だ。しかし、今日も青空は全く見えず、どんよりと曇っている。
再び八重岳に来たが、残念ながら開花状況は一昨日とあまり変わらない。飛行機に間に合う時間ぎりぎりまで写真を撮ったが、見頃の木を探すのに苦労した。
結局、暖冬による開花の遅れと、撮影日の天候が悪かったことが重なり、沖縄ではあまりいい写真が撮れなかった。
次に沖縄に行く機会があったら、是非名護城と今帰仁城址の満開の桜を見たい。