2週間前に続いて鎌倉のお寺を訪ねる。
江戸時代は駆け込み寺として知られた東慶寺には、私が知っているだけで3本のジュウガツザクラがある。そのうち1本は、ソメイヨシノに例えたら3分咲きぐらいの感じまで咲いていた。立ち入ることのできない塀の向こうにあるのが残念だが、時折差し込む日差しの中で、花自体が光を放っているかのように輝いて見えた。
境内の茶室でお茶会が開かれているらしい。和服の女性が路地を行き来するたびに華やいだ雰囲気になる。
円覚寺には18の塔頭(支院)があるが、そのうちの松嶺院にもジュウガツザクラがある。十数本はあるだろうか。どれもぽつぽつと花を付けているだけなので、写真にはちょっと撮りにくい。
松嶺院の門のすぐ外には春咲きの桜があって、今はちょうど黄葉が始まったところだった。同じ桜の仲間なのに、一方は花をつけ、一方は黄葉をしていて、同じ季節の中にいるとは思いにくい。
20分ほど歩いて成福寺へ。成福寺はJR横須賀線の横にあって、行きの電車の中からは見事に咲いたジュウガツザクラが見えて飛び上がるほどうれしかったのだが、そばで見ると改めてその咲き具合に感動する。3年続けてこの桜を見ているが、(見る時期の違いはあるかも知れないけれど)今年が一番花がいいのではないかと思う。盛りを過ぎて少し散り始めていたのがちょっとだけ惜しい。
こちらのジュウガツザクラも、時折差し込む夕日を浴びて輝いて見えた。
近所に住むという中年の女性に花のことをいろいろと尋ねられた。彼女は成福寺の桜のことを話には聞いていたが、実物を見たのは初めてとのことだった。桜がお好きと聞いたので、成福寺以外の鎌倉のジュウガツザクラ・フユザクラについて教えて差し上げた。
そのお礼というわけでもないだろうが、映画俳優の笠智衆さんのお墓がここにあることを教えてくださった。笠さんの出世作は小津安二郎作品だとよく言われる。私は小津安二郎監督の映画が好きで、笠さんの出演している作品も何本か見ている。(ちなみに小津安二郎さんの墓は先ほど私が訪ねた円覚寺の中にある。)
彼女が立ち去った後、私は墓地のちょうど真ん中あたりに見えた笠家と書かれたお墓の前に進んだ。墓誌に「笠智衆」という名前が書かれていたので間違いはないだろう。桜が結んでくれた小さな縁と思って、お墓に手を合わせた。
鯵と昆布が相乗効果を生んでいてとてもうまい。 (↑24KB) |