モバイラー中ちゃんの気まぐれ桜旅 title


「毎週桜旅」のあとがき

1999年10月10日から2000年6月24日まで38週に渡って続けた「毎週桜旅」のあとがきです。

2000.7.20作成
2000.8.10修正


2000年6月24日に、毎週桜旅のゴールにと密かに心に決めていた北海道旭岳温泉でチシマザクラを見ました。
1999年10月10日に鎌倉市で始めた毎週桜旅は、最終的に38週まで続けることができました。
きっとこれは連続花見の世界記録でしょう。(全く世の中の役に立たない世界記録ですが(笑)。)
(実は、最後のあがきで翌週も手を尽くして桜の開花情報を探したのですが、結局見つかりませんでした(笑)。これで記録は途絶えました。毎週桜旅は38週で完璧に終わりです。)

38週というのは、ほぼ1年の4分の3にあたります。おそらくほとんどの方が、そんなに長い期間にわたって桜の花が見られるとは信じられない、とおっしゃることでしょう。
私の友人達に毎週桜旅のことを話してもなかなか分かってもらえません。(第一、こういう旅に興味さえ持ってくれませんが(笑)。)


「毎週花見」を思いついたきっかけ

私は95年と98年に会社を辞め、九州から北海道まで桜前線を追いかける旅をしました。1ヶ所にとどまっていると桜前線が通過するのはほんの一瞬ですが、場所を移動しながら桜を見ることによって、3月下旬から6月前半までの長期にわたって桜の花を楽しむことができました。

私は98年夏にとある会社に再就職をしました。それまでに貯金をほとんど使い果たしてしまったため、まっとうに働かなくてはならなかったのです。
会社勤めを再開したとは言え、桜や旅に対する興味は全く衰えませんでした。私がもし一生困らない資産を持っていたら、仕事なんかせずに1年中旅をして暮らすことでしょう。でも、私も両親もお金とは縁遠い人間です。
すでに転職の限界と言われる35歳を迎えてしまったため、旅のために会社を辞めることはもうできそうにありません。
「会社勤めをしながら桜をとことん楽しむ旅はできないものか」といつも考えていました。

ところで、日本には約350種類もの桜があります。そのうち10種類程度は秋や冬に花をつけるのです。
これらは狂い咲きではなく、もともと秋や冬に咲く性質を備えています。
いろいろな本やホームページなどを調べていて、秋・冬咲きの桜が全国各地に150ヶ所近くもあることを知りました。また、その開花時期は9月下旬から1月下旬の間にかなり散らばっていることも分かりました。毎週でも花見できそうな程です。
1月下旬になってしまえば、沖縄のカンヒザクラや本州各地の早咲の春の桜が咲き始めます。更に3月下旬になれば、2度の桜前線を追う旅の経験を生かして、桜を追いつづけることができるでしょう。
「もしかしたら、秋から翌年の夏まで、毎週花見をすることができるのではないか」。
これが毎週桜旅を始めるきっかけでした。



では「毎週桜旅」とは?

私が勝手に決めた毎週桜旅のルールです。
・土曜日か日曜日のどちらかに桜を見る。
・毎週続ける。
・毎週桜旅の間に1度行ったところには、2度は行かない。
・1輪でも咲いていれば可とするけれど、できるだけ見頃の桜を探す。

自分で決めたこれらのルールが次第に自分の首を絞めていこうとは、最初は全く予想だにしなかったのでした。



桜はとても気まぐれ。だから「毎週桜旅」の日程調整はとても難しい

長期の旅を終えたときに、「あっと言う間のことに思える」と答えることが私にもよくありますが、今回の旅はいろいろと大変なことがあり過ぎたため、昨年秋に旅を始めた頃が十年前のことのようにも思われます。
「やっと終わった」というのが正直な感想です。
もう、こんな大変な旅は2度としないと思います(笑)。

私の旅日記の中では淡々と「○○市で桜が開花したと聞いたのでやってきた」などと書いていますが、桜の開花情報を得たり、訪問の順番をやりくりしたりするのは実はかなり大変なことだったのです。

皆さんも、春の桜の開花時期がずれることはよく経験されていると思います。「去年は今頃が満開だったのに、今年は全然咲いていない」こういうことはよくありますよね。
桜の開花時期は、その年の気温や降水量などに左右されます。ですから、私は桜を見に行く前に必ず現地の市町村役場などに電話をし、咲き具合を確かめてから出かけます。
ところが、春の桜の開花時期は例年よりずれても1,2週間程度なのですが、秋・冬咲きの桜の開花時期はその数倍ずれることがざらにあるのです。受話器を握り締めて「もう散ってしまったなんて、そんなはずはないのに...」と絶句してしまいそうなことが何度もありました。
そんなわけで、桜旅の日程調整は困難を極めました。

その週の土日にどこを訪ねるかは、ほとんどの場合木曜日か金曜日にならないと決まりません。目星をつけていた何ヶ所かの市町村に電話し、桜の咲き具合を比較し、どこにいくかを決めてやおら交通機関の予約に走るのです。
開花している場所が1ヶ所しかなく、たった1本の糸で記録が繋がった時もありました。11月第1週、1月第1週、2月第3週、そして6月の4週間がそうでした。

1月第1週は、土曜日が元旦、日曜日が2日でした。このとき目星をつけていたのは東京の小石川後楽園でしたが、12月も押しつまった頃に正月3が日は休園であることを知り、かなり焦りました。
それならば、と思い、元旦に上野恩賜公園(上野公園)に出かけましたが、狙いを定めていた1本のコブクザクラは前年の工事で切られてしまったらしく、ここでも桜に出会えません。
ここで思い出したのが、茨城に住む母が「新聞の茨城版で桜の開花情報を見た」と言っていたこと。急遽上野から常磐線に乗り帰省。母が切り抜いていてくれた記事を片手に翌日土浦市役所前庭を訪ね、無事に二季桜に出会うことができたのでした。幸いにも市役所の前庭には柵などはなく、正月2日でも自由に出入りすることができました。
もし母がその新聞記事に気付いてくれなかったら毎週桜旅が正月休みになってしまい、「毎週」という看板を下ろさなくてはならなかったことでしょう。



そして、やっとのことで花見をつないだ6月

また、予想していたことではあるのですが、6月に入ると桜が咲いている場所がとても少なくなってきました。
6月第1週に登別に行くことにしたのは、前週に北海道別海町内を運転していた時に、偶然聞いていたNHKラジオのローカルニュースで開花を知ったのがきっかけでした。もしこのときラジオをつけていなかったら旅は5月いっぱいで終わっていたことでしょう。

また、6月第2週も苦労しました。どうしても桜の開花情報が入らず、これで記録継続もおしまいかと思っていたときに、ネットで知り合ったMさんという同好の士がメールでミヤマザクラの開花情報を教えてくれ、辛うじて旅を続けられました。
恥ずかしながら、それまでミヤマザクラがこんなに遅くに咲くとは知りませんでした。

その翌週も開花情報が入りませんでしたが、Mさんに教えていただいたミヤマザクラに絞って調べた結果、日光で開花しているという情報を得ることができました。結局それが、その週の唯一の開花情報でした。
本当にMさんには感謝しています。

そして第4週にやっと、心にゴールと定めていた北海道旭岳温泉を訪ねることになるのですが、前週の水曜日まで桜の根元に雪が残っているほど寒さが続いている状況と聞き、すぐに桜が咲くとはとても思えませんでした。 ところが、旭岳温泉周辺では第4週に入って急に暖かい日が続き、チシマザクラは木曜日に満開を迎えたというのです。
山の気候の変動はとても激しいものですね。

こうして振り返ってみると、6月の旅は本当に綱渡りだったことを改めて痛感させられます。
いくつもの幸運が重なって、桜旅が更に4週間続いたのでした。


今だから言える、毎週桜旅で辛かったこと

私は毎年冬に必ず1度は風邪をひいて寝込みます。桜旅を続ける上でかなりそのことを心配していたのですが、2月第2週に心配が現実のものになってしまいました。18週目にして迎えた「毎週桜旅」最大の危機です。
月曜日からのどが痛くなり、微熱とだるさが水・木・金・土曜と続き、会社も休んでずっと寝込んでいました。とうとうその週は花見に出かけられないのかと半ばあきらめかけました。
しかし、日曜朝になってやっと熱も下がり、身体のだるさも少し楽になったので、重い身体をひきずるように熱海市姫の沢公園まで出かけました。本当は、姫の沢公園の桜はもう少し後に満開になるはずでしたが、風邪で衰弱しきった身体はそれ以上遠方の別の場所に出かけることを許してくれなかったため、少し早めの訪問になってしまいました。

ゴールデンウイークの青森県弘前市で車が故障したことは忘れられません。連休とあって修理工場がどこも開いておらず、途方に暮れたものでした。旅先でトラブルに遭うと本当に心細いものです。なんとかGW中に車を実家に戻すことができましたが、交換部品の取り寄せや修理にもっと時間がかかっていたら、GW翌週に再び弘前に飛び茨城県の実家まで車を回送しなくてはならないところでした。

また、5月から6月にかけて、北海道を飛行機で5往復せざるを得なかったのも辛いことの1つでした。
普通の個人旅行なら早割りなどの格安チケットを使うでしょうが、前に書いた通り桜の開花時期は気まぐれですので、変更が困難なチケットを前もって購入することがほとんどできません。正価に近い料金で飛行機に乗ったこともあり、ちょっと割高な旅になってしまいました。
自費での北海道週末旅行がこれだけ続くと財布に大打撃です。 飛行機代をかなりカード払いにしていますから、これからの請求が恐いです(笑)。
会社が忙し過ぎて体調がすぐれず、1泊する旅に出る元気がなかった週(6月第1週)に、北海道登別への日帰り旅行をせざるを得なかったのも大変悲しかったです。

5往復分の旅費といえば、2ヶ月ぐらい北海道で放浪旅行ができるお金です。
定職あっての旅だということは分かっているのですが、気持ちの中ではなかなか割り切れません。
東京に住む私にとっては、北海道というのは、1泊2日や、まして日帰りで観光する場所ではないと思います(苦笑)。

一方、毎週旅に出ていると、家の中のことがおろそかになっていけません。 かなり長期間、掃除や片付け、使った食器などがほったらかしになっていました。一人暮らしの独身ですしネ。
特に、毎週1泊旅行に出かけていた5月はひどいものでしたが、旅を終えた最近になってやっと少しずつ片付いてきました。



3つの野望

唐突に話題が変わりますが、今私は桜に関する3つの野望(笑)を持っています。
こうして書いておくと何かいいことがあるかも知れないので、貴重なスペースを割かせていただきたいと思います。
もしかしたら、そのうち野望が変わったり増えたりすることがあるかも知れません。

1つ目の野望は、このホームページを本にすることです。
1998年からこれまでに延べ138日分の旅日記を書いてきました。無我夢中でホームページを作ってきたらちょっとした分量になってしまいました。ホームページというのは、あまり文字を読むのに適していないと思います。自分でさえ過去のものを読み返すのが難しくなってきました。
また、今の日本ではつなぎっ放しでインターネットに接続している個人の方はまだ少数派でしょうから、旅日記がこれだけの分量になるとなかなかゆっくり読んでいただけないのではないかと残念に思っています。
更に、比較的お年を召した方のほうが桜に対するご興味が強いと思いますが、一方でそうした方ほどホームページにアクセスできる環境をお持ちでないでしょう。
できたら、自分のこれまで体験を本にまとめ、広い世代の方にゆっくり見ていただきたいと思っているのです。
もちろん、今の文章はあまり良くないので、リライトする覚悟はできています。
自費出版するほどの資金がないのは残念です。

2つ目の野望は、人に話すと笑われるかも知れません。
テレビに出演して、桜をレポートすることです。理想はテレビ朝日系のニュースステーションの「夜の桜旅」ですが、あのコーナーは代々人間的に深みのある方が担当されていますので、若造の私が出る幕はないでしょう。
多チャンネル時代になれば、シーズン中毎日桜を追いかけるような番組ができてもおかしくはなさそうですね。(今回の旅のように秋から翌夏まで毎週桜を追うような番組があったらいいなぁ。私ぐらいしか見ないかも知れないけれど。)

3つ目の野望は、日本のどこかにさくら資料館を作ることです。
これは、それほど焦っていません。定年で引退した後でもいいかと思っています。
これまでに得た知識・経験と、集めた本・資料、そして写真を展示し、桜のすばらしさを皆さんにお伝えしたいと思っているのです。


謝辞

まずは、このページをご覧くださった皆さんに感謝したいと思います。駄文と駄作(写真)にお付き合いいだき、本当に申し訳なく思っています。

また、@niftyのTさんにも感謝しております。98年にこのページを始めてからずっとお世話になりっ放しで心苦しいのですが、これからもよろしくお願いします。

それから、会社の同僚にも感謝したいです。皆さんのご理解と励ましがなければ、仕事の忙しさに負けてしまい、ここまで旅を続けることができなかったでしょう。
私のミスのせいで急に発生した大阪出張を肩代わりしてくれたDさん、H君、Sさんには特に感謝しています。

私の友人達からのメールにもずいぶん励まされました。特に、UさんやYさんのメールには感謝したいです。本当にありがとう。

最後になりますが、ミヤマザクラの開花情報を教えてくださった同好の士のMさんにも、本当に感謝しています。Mさんのホームページも参考にさせていただきました。Mさんのおかげで、私の中の桜の世界がひと回り広がったような気がします。



おわりに

毎週桜旅が終わったことをある知人にメールしたら、「毎週桜を追いかけるなんて、まさに恋をしている状態ですね」という返事をもらいました。
曰く、「やっと終わった。もうこんなに大変な旅(恋)はしない、と言いながら、もう次の旅(恋)に期待している。お金がなくても、傷ついても(車が壊れても)追いかけていく、これが恋でなくてなんでしょう。」
今の私の気持ちをぴたり言い当てています。
なるほど、これは恋だったのか。それにしてもずいぶんひどい恋わずらいだな。

もしかすると、7月下旬の今ごろも本州や北海道の高山部で、タカネザクラ、チシマザクラ、ミヤマザクラなどが咲いているかも知れません。
遅い年には、8月上旬まで桜が残っていることもあるそうですから。
でも、山中の桜は場所が特定しづらく、開花情報も不確実ですので、絶対に見られるとは限らないのが残念です。
また、私自身登山をしないため、高山部の桜は今のところ諦めざるを得ません。

次のシーズンの桜は9月下旬頃から咲き始めます。
秋咲きの、ジュウガツザクラ、フユザクラ、コブクザクラなどが各地で見頃を迎えるはずです。
私はその頃から、再び桜を追う週末旅行を始めたいと思っています。

今回の「毎週桜旅」は毎週続けることを優先するあまり、いくつかの 心惹かれる見所を外さざるを得ませんでした。来シーズンは、連続して 桜を見ることにこだわらず、のんびりと桜を訪ねたいと考えています。

それでは、2000年9月下旬頃にまたお会いしましょう!
ありがとうございました。


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